2016-01-01から1年間の記事一覧

夜と世の物語【12】

祭りの夜、一人で夜道を歩く女を見た。小石を蹴りながらふらふらと歩いている。 はじめは酔っぱらってるのかと思ったがどうもそういう様子じゃなさそうだ。 少し心配だったんで付いて行ってみた。 小柄で華奢だが、痩せすぎているわけじゃない。歳はわからん…

夜と世の物語【11】

男は親切心から彼女に近づいたようであった。しかし彼女の表情はまだ戻らない。 これまでひっそりと、だれにも邪魔をされないように夜の暗闇に溶けていたのにそれを邪魔された。これは彼女にとってあまり嬉しくない状況のようである。 「いやぁ、本当に悪か…

夜と世の物語【10】

彼女は肩に触れた手を払いのけると振り向きざまに掌を大きく振りかぶり手の主を叩いた。 バチンと鈍い音がした。どうやら主の顔面に綺麗に当たったらしい。 手応えと共に「ぶへえ!」と情けない声が聞こえた。 彼女は普段あまり感情を表に出さないが、自分の…

夜と世の物語【9】

暗い夜の闇の中、ネオン街の目が眩む明かりではない、提灯やガス灯の明かりで夜市は満たされていた。 市場には屋台が立ち並び、人々は活気に満ちていた。 そんな祭りに似た、独特の雰囲気の中、彼女と里子は買う物を物色していた。 里子は店に着けていく髪飾…

夜と世の物語【8】

ドアをけたたましく叩く音で彼女は目が覚めた。 「しまった。」と言い彼女は時計を見た。 すでに夜の7時を回っていた。いくら夏が近づいているとはいえ外はすっかり暗くなっていた。 ドアを開けるとイライラした様子の里子が立っていた。 「あんたが行きたい…