2016-07-28から1日間の記事一覧

夜と世の物語【12】

祭りの夜、一人で夜道を歩く女を見た。小石を蹴りながらふらふらと歩いている。 はじめは酔っぱらってるのかと思ったがどうもそういう様子じゃなさそうだ。 少し心配だったんで付いて行ってみた。 小柄で華奢だが、痩せすぎているわけじゃない。歳はわからん…

夜と世の物語【11】

男は親切心から彼女に近づいたようであった。しかし彼女の表情はまだ戻らない。 これまでひっそりと、だれにも邪魔をされないように夜の暗闇に溶けていたのにそれを邪魔された。これは彼女にとってあまり嬉しくない状況のようである。 「いやぁ、本当に悪か…

夜と世の物語【10】

彼女は肩に触れた手を払いのけると振り向きざまに掌を大きく振りかぶり手の主を叩いた。 バチンと鈍い音がした。どうやら主の顔面に綺麗に当たったらしい。 手応えと共に「ぶへえ!」と情けない声が聞こえた。 彼女は普段あまり感情を表に出さないが、自分の…